〜スリランカ・高級デパートODEL(オデール)の中庭〜 |
『早く到着したのですか?待ちましたか?』
マネージャーさんは気にしているような感じだった。
そして巻いてあった白い大きな紙を広げると
其処には
『Welcome to emy san !!』
と大きなキラキラ文字が描かれていた。
後で聞いた話だが、リラちゃんが書いてくれたらしい。
そのウェルカムボードを掲げるタイミングが無くて
少し、マネージャーさんは残念そうだった。
きっと予定ではemyが出口から出て来た時に
思いっきりボードをふりふりしたかったのだろう。
『車を外に待たしていますから急ぎましょう!』
そう言って外に止めてある車へ乗り込んだ。
雨はまだ激しく降っていた。
車へ向かっている間もずっとマネージャーさんは
『40分、出発が遅れると聞いていましたので・・。
どれくらい待ちましたか?』
と何度も聞かれた。
日本人気質として、待った事に対して
それほど気にもしていないのに、
何度も聞かれると
逆に気にしなければならないのかと思ってしまう。
『全然、大丈夫ですよ!気にしていませんから!』
と変な労いの言葉が出てくる。
でも、このやりとりをしながら2年前の事を思い出した。
スリランカの人々は兎に角『言い訳』をよくする印象があった。
『○○だからこうなった!』
『誰かが○○だから○○になる!』
そんな会話は日常茶飯事。
行動するよりも前に言い訳が出てくる。
そんな事を気にし出すとキリが無いので
何時もサラっと流しているけれど、
現地で奮闘している雅子さんは本当に大変だろうな・・
っと改めて思った。
しかし、マネージャーさんの言い訳を聞いていると、
やはり折角、リラちゃんが書いたウェルカム・ボードを
掲げる事が出来なかった悔しさがにじみ出ているように感じた。
そして大雨の降る中、車が出発した。
何となくこの大雨は『浄化の雨』のようにも感じた。
コロンボからゴールまでスムーズに行っても
車で2時間30分はかかってしまう。
『もしかして今は雨期ですか?』
と聞くと
『10月は雨期です!だから今日も1日雨が降っていました』
と言われてしまった。
(そっか・・)
雨だとあの燃えるようなインド洋の夕日を見る事が出来ないな・・
っと少し残念な気分に浸っていた。
その表情が表に出ていたのか
『大丈夫ですよ!晴れる日もありますよ!』
とマネージャーさんは声をかけてくれた。
でもその直ぐ後に
『それにしても20分も待ったのですか!
でも40分、飛行機が遅れたと言われたので・・』
とまたループのように言葉が戻って来た。
(だから怒っていないし気にしていないんだって!!)
と心の中で叫んでいたけれど、
このやりとりが一気にスリランカタイムへと誘ってくれた。
emyの記憶が正しければ、10回以上は同じ事を
言われていたように感じる。
最後の方では
『私が40分遅れると雅子さんに連絡したので
私に責任があるんですよ!だからあなたのせいで
待たされたのではありません』
とこれまた変な言葉が出て来た。
しかし、この言葉で一件落着した感じがあり、
結局、原因の発端は自分にある事にしておく方が
楽な気になった。
でも、何て言えば良いのだろう・・。
彼らの言葉に罪悪感や悪気は一切無いのは事実だと思う。
日本人感覚を捨て
『郷に入れば郷に従え』
の心構えが、異国の地で楽しく過ごす秘訣のようなもの。
だから逆に最後、自分の非を認めたような言い方は
良くないな・・っと思った。
2年後の道路事情は一気に改善され、
高速道路も新しく出来ていた。
そして、日本と同じく左側通行なので違和感が無い。
きっとイギリスの統治下だった頃の名残であろう。
時計を見ると夜中の1時過ぎ・・。
まだ興奮冷めやらぬ感じで眠気はなかった。
明かりも無い真っ暗な道路の先や緑に覆われた
ワイルドな風景をぼーっと見ていた。
『スリランカでもスピード違反で捕まえたりするんですか?』
となにげに聞いてみると、
結構、捕まる率が高いとの答えだった。
ほとんど車が走っていないハイウェイ・・
そしてほぼ直線に近い道路は走りやすいと思いきや、
変な走り方をする車が何台かあった。
なので、日本と違ってクラクションは良くならすし、
追い越す時はハイビームでパッシングしながら進んで行く。
これまた日本とは真逆の運転方法。
しかし、何故そんな走り方をするのか良く解る。
居眠りなのか?よっぱらいなのか?
フラフラと揺れている車を良く見かけるのだ。
(怖過ぎ・・)
そして高速道路を降りて街中へ行くと
信号機が無いので常に車・人・自転車・三輪バイク(トゥクトゥク)が
入り乱れて走っている。
その間をすり抜けるように進む緊張感!
安心して寝れる訳が無い。
夜中なのにまだまだ車は沢山走っていた。
ぶつかりそうになって後部座席で思わず
キャ〜キャ〜!
と声をあげてしまう。
『この時間はまだ車が少ないから走りやすい。
昼間はもっと混んで全く動かないから!』
とマネージャーさんは言うけれど、
恐怖に感じるのは量のせいではなく、強引な運転の仕方にある。
この時点で完全にスリランカタイムへとチェンジしていた。
そして街中を抜けて再び高速道路へ入った時は
さすがに力尽きて寝てしまっていた。
しばらくすると
『OHAYOUGOZAIMASU!』
と日本語で起こされた。
『雅子さんに日本語を習っているんですか?』
と聞くと
『1日、一言マダム(雅子さん)に日本の単語を教えてもらい、
私もマダムに英語を教えてあげています!』
と堅実な答えが帰って来た。
凄いな・・
言っては悪いけど、スリランカ人って何処か
信頼出来ない所があるけれど、彼は真面目なのかもしれない。
でも2年前の事もあるし・・。
自分でも自然とスリランカ人に対してかなり警戒心が
出ている事に驚く。
そして車は雅子さんのカフェの前で停まった。
時計を見ると3時をまわっていたので、
きっと家族全員、寝ているのかと思っていたが、
呼び鈴をならすと雅子さんが元気に出て来てくれた。
『あれ?まだ起きていたの?』
と驚いて聞くと、
『雨漏りしてて〜・・ちょっと掃除をしていたんですよ!!』
と雑巾片手に答えてくれた。
そして中に入ると素敵な空間が広がっていた。
しかし頭の中は半分も働いていない。
忘れないうちにスーツーケースを開けて
お土産を取り出し、ご挨拶もそこそこに切り上げて
まずは寝て旅の疲れを取る事にした。
to be next ・・
0 件のコメント :
コメントを投稿